ステーションC
本システムは、工作機械以外への応用事例として、ソニーマグネスケール製非接触測定機をOSEC-IIアーキテクチャに基づくオープンコントローラで制御している。
OSEC-IIアーキテクチャは、MMI・リソースマネージメント・動作生成・機械制御・デバイス制御の5つの機能群で構成され、各機能群間を接続する標準インタフェースを定義している。
本システムは、5つの機能群を標準インタフェースに準拠したパソコン上のソフトウェアで実現した、全ソウトウェアCNCで制御されている。
図
4-6 ステーションC全景
センサおよび電機デバイスとのインタフェースに、パソコンに実装した汎用カウンタボード、D/AボードおよびDI/DOボードを使用し、8msecで起動されるOS上のプロセスで位置ループに関する演算処理を行う。
また、PLCはIEC-1131に準拠したソフトウェアPLC
(ISaGRAF)を実装している。
図 4-6に本システムの全景を示す。
本システムは、OSにOS/2
Warpを採用し、OSEC-IIアーキテクチャに基づく5つの機能群をソフトウェアで実現した実装モデルとして設計された。図 4-7にハードウェアの接続ブロック図を、
また表 4-3に本システムのハードウェア構成を示す。
表
4-3 ハードウェア構成(ステーションC)
パソコン本体
| ソニー製QL-50GICW3
| Pentium 133MHz
|
モニタ |
ソニー製CPD-20SF2
| 20 inch CRT
|
カウンタカード
| ハイバーテック製HPC-CTR204
| 4ch A/B相カウンタ 1MHz max.
|
D/Aカード
| コンテック製 DA16-4D
| 16ビット、±10V、セットリングタイム 13μs
|
Di/Doカード
| ハイバーテック製HPC-DIO64
| 絶縁型 入力32点、出力32点
|
ネットワークカード
| スリーコム製 3C−590
| Ethernet
|
サーボドライバ
モータ
| 安川電機製 Σシリーズ
| 速度制御型 速度-電圧指令
|
位置検出器
| ソニーマグネスケール製
BS75A、BD50
| レーザスケール分解能10nm A/B相
|
測定機 |
ソニーマグネスケール製
非接触形状測定機
| |
以下、実装モデルの概要を紹介する。
図
4-7 ハードウェア接続ブロック図(ステーションC)
- MMI
オペレータにとっての使い易さは、作業目的、環境などによって種々雑多であり、一義的に定義できるものではない。
操作パネルに対する要求の多様さに対して、GUIパネルなど操作パネルを容易に構築できる手法はパソコンレベルで多く提案されている。OSE研究会では、アプリケーションフレームワーク手法を取入れ、オブジェクト手法により標準的なマシーンリソースオブジェクトをモデル化した。本システムでは、IBM
VisualAge C++で作成したマシンリソースオブジェクトの標準モデルを採用している。
- リソース制御
リソース制御は、現在位置などのフィードバック情報、実行コマンド、目標位置などの指令情報、機械の稼働状況などを標準インタフェースに従ってアクセスし管理する。また、言語プロセッサの起動、停止などMMI、ネットワークおよび言語プロセッサとマシン制御の間を協調管理する。リソース管理情報を自由に選択することで、ユーザ要求に合致したMMI、生産ネットワーク情報を構築できる。本システムでは、マシンリソースオブジェクトの標準モデルに対応した情報を実装している。
- 言語プロセッサ
OSEC-IIでは、マシン制御との標準インタフェースを定義することにより、言語プロセッサの選択を可能にしている。
複数の言語プロセッサを切り替えて使用したり、また標準インタフェースに準拠した他の言語プロセッサに置き換えることもできる。OSE研究会では、固定サイクル、ユーザマクロなど、加工ノウハウの記述に限界が見えたEIAコードに対して、新言語「OSEL」を提案している。本システムでは、EIAコードデコーダおよび「OSEL実行系(OSEL-EX)」を実装している。
- マシン制御
マシン制御には、手動および言語プロセッサでデコードされたコマンド処理と軌道生成(補間)等の処理が割り当てられる。
OSEC-II標準インタフェースにより、軌道生成プロセスの追加、置き換え等を可能にしている。本システムでは、DDAを用いた軌道生成を実装している。
- デバイス制御
- サーボ制御
サーボ制御において、位置ループ、速度ループおよび電流ループの実装方法が、システムの性能を決定する大きな要素となる。
OSEC-IIでは、位置、速度および電流指令に対して標準インタフェースを定義し、種々の物理インタフェースに対してデバイスドライバで対応している。本システムでは、ソニー製パソコンに汎用D/Aボードとカウンタボードを装着し、安川電機製速度制御用サーボドライバおよびソニーマグネスケール製位置検出器に接続している。パソコン上のデバイス制御部で位置ループの演算を処理し、アナログ電圧-速度指令信号をサーボドライバに入力している。
また、位置検出器の出力を直接カウンタボードで計数し、フルクローズドループを構成している。
- PLC
OSEC-IIでは、デバイス制御部で標準インタフェースを定義し、ソフトウェアPLC、内蔵ボードPLCおよび外付けPLCに対してデバイスドライバで対応している。本システムでは、IEC1131に準拠したソフトウェアPLC
(ISaGRAF)を採用し、ワークベンチおよびランタイムモジュールを実装している。また、汎用DI/DOボードを物理インタフェースとして使用している。
- ネットワーク
本システムでは、他に2台のPCをネットワークで接続し、測定機の稼働状況、測定結果のグラフィック表示などをデモした。
以上、OSEC-IIで定義した、5つの機能群と標準インタフェースに基づく実装モデルの設計、試作を通して、コントローラのオープン化による「目的に応じた手段の選択肢を広げる」効果が実証できたといえる。
CNCに求められる、安全性および制御性能(リアルタイム性)に関して、現状ではNCボードなどのハードウェアに頼らざるを得ない部分がある。
しかしながら、汎用ボードおよび汎用サーボドライバを用いてOS/2
Warp上に8msecサンプリングのフルクローズド位置ループサーボを構築できたことは、オープン化の実証デモとして可能性を十分証明できたといえよう。