1. OSE研究会の活動の概要

  1. 目的
  2. スケジュールと成果
  3. 組織
  4. OSEC-Iの概要
  1. 目的

OSE研究会のリーダである摂南大学の和田教授は「CNCの基本機能とは予め与えられた空間形状情報を制御対象の駆動装置を動かすための制御情報に変換するための1種の情報変換装置である」と述べている(図 1-1)。工作機械はCNCの基本機能に加工作業を行うための種々の支援機能が集約されたものである。図 1-2に示すように従来のCNCはその機能がブラックボックスになっていた。パソコンCNCは情報処理系との融合を実現した第1段階のオープンコントローラであるが、工作機械やCNCとしてのアーキテクチャや標準インタフェースの視点がまだまだ欠落している。

OSE研究会の使命は、コントローラの原点に立ち返って、ネットワークをベースとする将来の生産システムのオープン化のために、産業機械のコントローラのアーキテクチャ及び標準I/Fに関する研究開発を行うことである。そしてその結果として、ユーザの生産環境や目的に応じて産業機械を自由に再構築可能で、保守や保全が容易で、ライフサイクルコストを最小化できる、オープンな生産システム環境を実現することである。

1-1 CNCの基本機能

1-2 従来のCNC
  1. スケジュールと成果

OSE研究会のこれまでの活動の概略は以下のとおりである。

199412OSE研究会発足(OSEC-Iプロジェクト開始)

1995925OSEC-I発表と公開デモ(於・豊田工機@刈谷)

ホームページ http://www.mli.co.jp/OSEC/

12OSE研究会メンバ公募(OSEC-IIプロジェクト開始)

121415日第1回全体会議@吉良吉田(幹事:豊田工機)

199621314日第2回全体会議@三田(幹事:三菱電機)

31819日第3回全体会議@熱海(幹事:日本アイ・ビー・エム)

51718日第4回全体会議@裾野(幹事:東芝機械)

71920日第5回全体会議@吉良吉田(幹事:豊田工機)

826OSEC-II発表(於・機械振興会館@芝公園)

82728OSEC-II実証システム公開デモ(於・機械振興協会技術研究所

@東久留米)

11月 日本国際工作機械見本市(JIMTOF)におけるOSEC-II準拠システム
のデモ(予定)

  1. 組織

19968月時点でのOSE研究会の組織構成を図 1-3に示す。運営委員会はOSE研究会の運営方針や対外的な活動を決定する最高機関であり、実行委員会はその下で実務的な活動を行う。技術的な研究開発活動を行うため、199512月のOSEC-IIプロジェクト開始以来、必要に応じてWG(ワーキンググループ)が発足してきた。制御・MMIOSEL・ネットワークの各WGは、オープンコントローラに対してそれぞれ機械・操作員・CAD系・生産ネットワークからみた付加価値のあり方を中心に討論してきた。アーキテクチャWGOSECア ーキテクチャを大局的な視点から確認する場であり、各WGから提案される仕様の整合性を検証することと取りまとめを中心に行ってきた。

1-3 OSE研究会の組織構成(19968月時点)
  1. OSEC-Iの概要

工作機械のCNCに代表される産業機械のためのコントローラは、1970年代に登場したマイクロプロセッサの進歩などにより高速・高精度化がなされると同時に、マンマシンインターフェイス(MMI)・自動ツール交換装置・計測装置・パレットチェンジャなどの周辺機器の統合化、すなわち機能集約化が急激になされてきた。こうしたコントローラに対して、OSEC-Iではエンドユーザからの要求事項を表 1-1のような形でまとめてみた。しかしながら、現状で『オープン』といわれているものを含め、CNCなどのコントローラではこういった要求を満足できないでいる。その理由はこれまでの機能集約化がマイクロエレクトロニクス技術の応用に留まり、オープンな生産システム環境や機能ベースのアーキテクチャに基づいたものでなかったからである。

1-1 エンドユーザからコントローラへの要求事項
項目
要求内容
再構成性(リコンフィギュレーション) 自動車のシリンダブロックの加工ラインでは作業の80%が高精度を必要としない荒・中加工で、加工方法も穴明け・平面削りが中心である。多品種の部品を加工するジョブショップシステムでは使い勝手の良いMMIが必要であるが、省力・無人化の方向にある加工ラインでは高機能MMIは不必要である。使用される環境と使用するユーザに合わせて、NC機能を拡大縮小可能なこと。
スケーラビリティ CNCを構成するソフトウェアとハードウェアの機能を独立させ、制御軸数や特殊サイクル機能、特殊高トルクモータやNCプログラムの記憶容量の選択など自由に着脱可能なこと。
NC 言語 EIAコードはマクロ化やコントローラベンダ毎の差別化機能により複雑化してきた。CAMなど上位システムや周辺システムとの結合時に不具合が多い。
新機能 金型加工では磨きを省くためCNCに曲面の補間機能が必要である。機械の高精度化にはセンサフィードバック制御が必要である。これら特異分野のエキスパートであるサードパーティが参画できる環境が求められている。
インテリジェント化 工具交換はNCプログラムの補助機能で指定するが機械メーカごとに指定方法が異なる。また剛性のある機械とない機械では切削条件は異なる。個別の機械に対してNCプログラムが互換性を持つためには、機械が異なっても同じ動作をするCNCのインテリジェント化が望まれる。
生産システムのオープン化 最新のオブジェクト技術・ネットワーキング技術などに対応していない。進んだ3次元CAD/CAMやモニタリングなどのパッケージソフトウェアの活用ができない。

そこでOSEC-Iでは図 1-4に示す参照モデルを規定することで真の『オープン』コントローラのためのアーキテクチャ策定を目指した。このOSEC-Iアーキテクチャでは、コントローラは生産システムの一部として定義され、ここでは設計データから加工までの情報の処理手順が明確にされている。具体的には、今までブラックボックスだったCNCを含めた生産システムを、処理階層として入力処理を主に行う階層・演算を行い軌跡を創成する階層・制御を主とする階層など7階層に分類し、各階層で処理すべき内容を定義した。

1-4 OSEC-I アーキテクチャ参照モデル

またOSEC-Iでは、1960年代から使われてきたが柔軟性・拡張性・可搬性などの点において問題が数多く指摘されるEIAコード(Gコード)に代わるものとして、FA機器記述言語FADL (Factory-Automation-equipment's Description Language)も提案した。FADLは式・繰り返し・条件分岐といったプログラミング言語としての制御構造を持つスクリプト記述型の言語であるPerlをベースに、工作機械の加工プログラムのための拡張として、工作機械の仕様・工具・治具・I/O接点など機械依存情報の抽象化、自由曲面・自由曲面の数式による直接表現、原始的な軸動作記述などの機能を追加している。マクロや関数からなるライブラリによって加工プログラムのモジュール化をすすめるいう効果を目指した。またNCデータデコーダというトランスレータを介することにより、EIAコードによる過去の資産を継承するメカニズムも考慮している。