ナッシュビル(Nashvile)───音楽好きの人なら知っているだろう。米テネシー(Tennessee)州の州都(人口約60万人)でカントリーミュージックの中心地として有名である。そこから車で簡単に行けるところに、エルビス・プレスリーが有名になってから住み、その墓もあるテネシー州最大の都市(人口約70万人)、メンフィス(Memphis)がある。テネシー州の人口は約600万人、大体、埼玉県、千葉県ぐらいである。しかし、面積はまるで違う。埼玉県、千葉県の20~30倍はある。
東京に生まれ、しかも都心で人生のほとんどを過ごしてきている僕にすれば、ナッシュビルは州都とは言っても、中心部の一角を除けば、田園風景が延々と拡がるまったくの田舎町だ。そこで奇妙に目に付くのは教会の多さだ。聞けば、米国でも人口当たりの教会の数はトップクラスで、日曜ともなればほとんどの人が教会に行くという。これが僕がナッシュビルに初めて行った時に持った印象である。米国は、やっぱり想像する以上に、大きい国で、一言で米国と評論するのは間違いだということを改めて思い知らされた。数年前のことである。
テネシー州は、南北戦争では南軍に属し、ナッシュビルはその最大の激戦地の一つとなった。そこにバンダービルド(Vanderbilt)大学は存在する。南北戦争の影響なのだろうか、そこでは「うちは南部のハーバード大学だ」と言う言葉が何度も聞かされた。
眉唾ものと思っていたところ、それから後のある日、バンダービルド大学はアメリカンフットボールの大学リーグで最下位が定席らしく、その状況を改善するために優秀な選手を入学させたらどうかなどの意見が出て問題になった。それに対して最終的に「我が校のフットボール選手の9割以上はきちんと学業を修めて卒業している、これは米国で一番である。学業と両立させることがわが校の方針であって、ただスポーツに優れているからといって、入学させはしない」―――こんなことを、多分、学長だと思うが、発言している様子がテレビで大きく取り上げられ、その場面が繰り返し放映された。CNNも繰り返し放映していた。
バンダービルド大学のことを「南部のハーバード大学」という意味が分かったような気がした。同時に「米国を引っ張っているのは、日本に伝わってくる情報という点では馴染みが深い、東部でも西部でもない。東部のワシントンでもニューヨークでも、そして西部のロスアンジェルスでもサンフランシスコでもない。米国民の大多数を代表する意識は、日本からは見えにくい米国中南部に依存している。これから仕事をする上で、そのことを理解しなければならない。」―――そんなことを僕が20代のこと仲良くなった米国人に何度も言われたことを思い出した。
その忠告に従って、問題が起きると、いつも「本当の米国の意図は何か」と考えるようになった。その後、縁あって同大学教授で同大学日米研究協力センター所長であるジェームス・アワー氏とも知り合うことになった。同氏の快諾が得られたので、当ホームページで同氏のコメントなどを順次紹介することにした次第である。
(前田勲男)
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ジェームス・アワー
(James E Auer)
バンダービルド大学教授
公共政策研究所
日本研究協力センター所長
1941年 米ミネソタ州生れ。
マルケット大学卒。
タフツ大学
フレッチャー
法律大学院 で博士号
論文「Rearmament of
Japanese Maritime
Forces 1945-1971」
は邦訳され、時事出版
から「蘇る日本海軍」
として出版。
1963年~1983年 米海軍勤務
その間、日本海上自衛
隊幹部学校留学、横須
賀母港の駆逐艦の
指揮官など長期間の
日本 勤務。
1979年~1988年
国務総省安全保障局
日本部長
現在、大学院を含む同大学の学生を対象に日米関係論、海上権力史を教える。これまでに同大学オーエン経済大学院の非常勤講師および工学部管理工学科の研究教授などを兼任。
バンダービルド大学
同大日米研究協力センター
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